2021/07/26
人の関節や靭帯は強固にできていて普段緩むことはありませんが、女性は唯一大きく緩むことがあります。それが妊娠・出産です。
妊娠中に卵巣や子宮、胎盤などから分泌される『リラキシン』という女性ホルモンにより、関節や靭帯が緩まって、分娩時に赤ちゃんがスムーズに出てこられるようになるのですが、関節と靭帯が緩まると骨盤は不安定になりグラグラの状態になります。
そして出産時、赤ちゃんがお腹から産道を通って出て来るには直径約10センチ以上の産道が確保されていなくてはいけません。そのために骨盤の前側にある恥骨結合と後ろ側にある仙腸関節は横に大きく広がります。
そのため、骨盤は出産後もグラグラの状態が続き、周りの筋肉や靭帯に負担がかかりゆがみやすくなります。出産後、子宮の収縮と共に骨盤はある程度戻りますが、人によっては完全に戻らず、歪んでしまっています。では、歪んでしまった骨盤を元の位置へと戻す矯正はいつからすればいいのでしょうか?
骨盤矯正に適している時期は平均的に、普通分娩(経腟分娩)では産後約1ヶ月頃から。帝王切開の場合は産後約2ヶ月頃からです。
出産直後は子宮が急激に収縮する後陣痛が約1ヶ月続きます。産後の悪露も1ヶ月程で落ち着いてくるので、産後の骨盤矯正は後陣痛、悪露が落ち着いた後が一番良いです。
逆に産後すぐに骨盤ベルトやガードルなどで骨盤を締め過ぎてしまうと、悪露の排出を妨げてしまって、身体の回復を遅らせてしまう事になります。
産後1ヶ月は身体を休ませることを最優先に考えることが大切です。この時期に無理をすると、尿漏れや腰痛、股関節痛や鼠径部痛、産後うつなどの症状が出やすくなったり、これらの症状が長引く原因となります。したがって、産後1ヶ月の期間は赤ちゃんの世話や食事、お風呂など、必要最低限の動作以外はゆっくりするようにし、他の家事はできるだけ家族の方に協力してもらうようにしましょう。
帝王切開の場合は骨盤矯正をしなくても大丈夫ですか?骨盤は開いていないのですか?という質問をよく受けますが、普通分娩、帝王切開に関係なく骨盤は開くので結果的には骨盤矯正は必要です。
分娩時に赤ちゃんが産道を通らないので普通分娩に比べると恥骨結合や仙腸関節にかかる負担は少ないですが、妊娠期に約10ヶ月間かけておなかの赤ちゃんが大きくなるにつれてその重みや子宮の重みでも靭帯や関節が緩み、それにしたがって骨盤は開き、人によっては完全に戻らなくなります。ですので、普通分娩、帝王切開に関係なく骨盤矯正は必要になってきます。
それとは別に、普通分娩と違って帝王切開では特に気を付けたいことがあります。それは腹部を切開しているため、腹直筋や腹横筋、さらに腹斜筋がダメージを受けているので、インナーユニットの回復が遅くなるということです。
インナーユニットとは、お腹の空間(腹腔壁)を構成する筋群のことで、横隔膜・骨盤底筋群・腹横筋・多裂筋で構成されています。骨盤や腰椎を安定させるのに重要なインナーユニットの回復が遅いと、腹圧をコントロールして姿勢を維持することがつらかったり、手足を自由に動かす事さえできなくなります。ただ、この部分の回復には個人差がかなり関係してくるので、帝王切開をした患者さん全員の回復が遅くなるわけではなく、一人ひとりの回復経過を観察しながら慎重に矯正していく必要があります。
出産後の疲労が取れ、身体が落ち着いてきたら早めに矯正をした方が良いのですが、出産後数年経っている方でも矯正できる場合があります。人によって個人差があるので全ての人にあてはまるわけではないのですが、実際に私の経験の中で、出産後骨盤矯正を一度もしたことが無く、骨盤の開きで下半身太りが気になっていたという小学3年生のお子さんを持つお母さんに約3カ月間週3回のペースで骨盤矯正をしたところ骨盤が締まり、みるみるうちに下半身太りが解消されていったという経験もあります。
とはいえ、年月が経てば徐々に強固になるので、骨盤矯正がしやすいのは産後6ヶ月くらいまでです。でも骨盤の骨と骨を繋いでいるのは筋肉や腱の為、骨同士が固まって結合・癒合するわけではないので、いくら年月が経っていても矯正は可能です。
これらのことから、出産して何年も経ったからといって諦めないでください!まだ間に合います!