顔面神経麻痺

顔面神経麻痺（がんめんしんけいまひ） は、顔面を支配する顔面神経が損傷または
圧迫されることによって起こる、顔の筋肉の動きに影響を与える病態です。
これにより、片側または両側の顔面に麻痺が現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。

原因

顔面神経麻痺は、以下のようなさまざまな原因によって発症します。
1. ベル麻痺（特発性顔面神経麻痺）:
• 最も一般的な原因であり、通常、片側の顔面に突然の麻痺が発生します。
原因は完全には解明されていませんが、ウイルス感染（特にヘルペスウイルス）が
関与していると考えられています。
2. ウイルス感染:
• 風邪やインフルエンザ、帯状疱疹（ヘルペスウイルス）などが顔面神経に影響を与え、
麻痺を引き起こすことがあります。特に帯状疱疹が顔面神経に影響を及ぼす場合には、
ラムゼイ・ハント症候群という状態が現れます。
3. 外傷や事故:
• 顔面や頭部への外的な衝撃（例えば交通事故やスポーツなど）により、
顔面神経が損傷することがあります。
4. 耳や顔の腫瘍:
• 腫瘍が顔面神経を圧迫することが原因で、麻痺が生じることがあります。
例えば、耳の近くにできる腫瘍（神経鞘腫など）が圧迫を引き起こします。
5. 糖尿病や高血圧などの疾患:
• 慢性的な疾患（糖尿病、高血圧、動脈硬化など）が顔面神経の血流を悪化させ、
麻痺を引き起こすことがあります。
6. 神経圧迫:
• 顔面神経を圧迫する血管や筋肉、または異常な構造が原因で麻痺を引き起こすことがあります。
7. その他:
• まれに、免疫系の異常や感染症後の合併症として、顔面神経麻痺が発症することがあります。

症状

顔面神経麻痺の症状は、顔面神経の損傷の程度や発症場所によって異なりますが、
一般的な症状は以下の通りです。
1. 顔の片側の麻痺:
• 麻痺が起こった側の顔面筋肉が動かなくなります。例えば、目が閉じにくくなったり、
口角が下がったりすることがあります。
2. 目を閉じるのが難しい:
• 顔面神経が麻痺すると、目を完全に閉じることができなくなり、眼が乾燥したり、
異物が入りやすくなることがあります。
3. 口角の下垂:
• 口角が下がり、笑ったり食べたりするときに不自然な動きが見られることがあります。
4. 味覚の異常:
• 顔面神経は味覚を司る役割も持っています。麻痺が起こると、
舌の前方の部分に味覚異常を感じることがあります。
5. 耳の後ろや顔の痛み:
• 顔面神経の麻痺が起こる前に、顔や耳の後ろに痛みを感じることがある場合もあります。
6. 涙の分泌異常:
• 涙の分泌が異常になり、乾燥や涙が過剰に出ることがあります。

対処法

顔面神経麻痺の治療方法は原因によって異なりますが、以下の一般的な対処法があります。
1. ステロイド療法:
• ベル麻痺などのウイルス性の顔面神経麻痺では、早期にステロイド薬（例えばプレドニゾロン）を
使用することが有効です。ステロイドは神経の炎症を抑え、回復を促進します。
2. 抗ウイルス薬:
• 帯状疱疹やヘルペスウイルスが原因の場合、抗ウイルス薬（アシクロビルなど）が
処方されることがあります。
3. 理学療法（顔面リハビリ）:
• 顔面の筋肉を再訓練するための理学療法や顔面マッサージが行われることがあります。
顔面の筋肉を使って、麻痺から回復するのを助けます。
4. 目の保護:
• 目を閉じることができない場合、人工涙液を使ったり、
目を保護するためのパッチを使用したりすることがあります。
夜間には目を閉じるためのテープを使うことが勧められます。
5. 痛みの管理:
• 顔面や耳の後ろに痛みを感じる場合、鎮痛薬や抗炎症薬を使用して痛みを和らげることができます。
6. 手術:
• 重度の場合や、顔面神経麻痺が回復しない場合、外科的な治療が検討されることがあります。
例えば、神経移植や顔面神経の修復手術が行われることがあります。

回復と予後
• ベル麻痺の場合、治療を受けた多くの患者は、数週間から数ヶ月内に顔面の機能が回復します。
ただし、回復には個人差があります。
• 重症の麻痺や神経損傷が深刻な場合、完全な回復には時間がかかることがありますが、
リハビリを続けることで改善が見込まれます。

顔面神経麻痺が発症した場合は、早期に専門医（神経科、耳鼻科、または形成外科）に
相談し、適切な治療を受けることが回復の鍵となります。