前庭神経炎

前庭神経炎（ぜんていしんけいえん）は、内耳の前庭神経が炎症を起こすことによって発症する病気で、
主にめまいや平衡感覚に関する症状が現れます。
前庭神経は、体のバランスを維持する役割を果たしているため、
この神経に異常が生じると、平衡感覚に影響を与えます。

原因

前庭神経炎の原因は完全には明らかではありませんが、
以下のような要因が関与していることが多いとされています。
1. ウイルス感染: 前庭神経炎は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染に
続いて発症することがあります。特に、ヘルペスウイルスや上気道感染が
原因となることが多いとされています。
2. 免疫反応: ウイルス感染に対する免疫反応が、誤って前庭神経を攻撃することに
よって炎症が引き起こされることがあります。
3. 血行不良: 内耳への血流が不足した場合に、神経に炎症が生じることがあります。
4. ストレスや過労: 一部の研究では、過度のストレスや身体的な過労が前庭神経炎を
引き起こす可能性があると示唆されています。

症状

前庭神経炎の主な症状は、突然のめまいやバランス感覚の異常です。
具体的な症状は以下の通りです。
1. 急性の回転性めまい: 突然、周りがぐるぐる回るような激しいめまいが起こります。
めまいは通常、数時間から数日続くことがあります。
2. バランス障害: 平衡感覚の異常により、歩くことが難しくなったり、
ふらついたりすることがあります。
3. 吐き気や嘔吐: めまいが強くなると、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
4. 聴力には影響がない: 前庭神経炎は、通常、聴力に影響を与えません。
聴力に関する問題がある場合、別の疾患（メニエール病など）の可能性があります。
5. 眼振（がんしん）: 目が無意識に左右や上下に揺れる現象が起こることがあります。

対処法

前庭神経炎の治療は、主に症状を軽減し、回復を促進することが目的です。
治療方法としては以下のものが考えられます。
1. 安静と休息: 急性期には、めまいを悪化させないために安静にしていることが重要です。
できるだけ静かな環境で休むようにしましょう。
2. 薬物療法:
• 抗めまい薬: めまいや吐き気を軽減するために、抗めまい薬（例えば、メクリジンや
ジフェンヒドラミン）が処方されることがあります。
• 抗炎症薬: ウイルス感染や炎症が原因である場合、
抗炎症薬やステロイド薬を使用することがある場合もあります。
• 吐き気止め: 吐き気が強い場合には、吐き気止め（例えば、プリクロルペラジン）が
使われることがあります。
3. リハビリテーション（前庭リハビリテーション）: めまいが収まった後、
平衡感覚を回復させるためのリハビリが行われることがあります。
前庭神経を鍛えるための運動が含まれ、めまいを減らし、バランスを改善するのに役立ちます。
4. 水分補給と食事: 吐き気や嘔吐がある場合は、脱水症状を防ぐためにこまめに水分を補給することが大切です。
5. 症状が長引く場合: めまいが数週間以上続く場合や症状が重度である場合、
再評価を行い、専門的な治療が必要となることもあります。

回復過程

前庭神経炎の回復は通常数週間以内に始まりますが、完全な回復には時間が
かかることもあります。症状が軽度であれば、数日から数週間で回復しますが、
症状が重い場合には前庭リハビリテーションが有効です。

前庭神経炎は通常、命に関わる疾患ではなく、適切な治療で回復が期待できます。
しかし、症状が長引く場合や悪化する場合は、専門医による再評価と治療が必要です。